浪花千栄子の立志伝-カフェー「オリエンタル」で女給になる

NHKの朝ドラ「おちょやん」のモデル浪花千栄子の生涯を描く立志伝の第7話「カフェーで女給になる」です。

浪花千栄子の立志伝の目次は「おちょやん-浪花千栄子の立志伝の目次」をご覧ください。

憧れの京都

父・南口卯太郎に給料を搾取されていた事を知った浪花千栄子は、初めての給料を手にして奉公先をドロンした(無断で消えた)。

そんな浪花千栄子が向かったのは、憧れの地・京都だった。

浪花千栄子が道頓堀の仕出し料理屋「浪花料理」で働いていたとき、「浪花料理」は向かいの店と一緒に、毎年、春と秋に京都へ運動会に行くのだが、浪花千栄子だけ留守番をさせられており、一度も京都に行ったことがなかった。

そして、いつも店の人が京都から戻ってくると、京都は良かったというので、京都に憧れていたのである。

しかし、いざ京都の京極に着いてみると、浪花千栄子は落胆した。華の京都といえど、繁華街の道頓堀に住んでいた浪花千栄子にとっては、驚くほどでもなかったのである。

さて、浪花千栄子は京都観光を終えると、口入れ屋(私設の職業紹介所)を回って、お屋敷奉公の仕事を探したが、親の証明書が無いと雇えないと断られてしまう。

日は暮れてきたのに、寝るところもない。宿屋に泊まれば、いくら取られるか分らない。下駄や切符代で所持金は9円に減っていた。

最後の口入れ屋で「屋敷奉公の仕事はありませんか」と尋ねると、口入れ屋が「アンタ何歳です」というので、浪花千栄子は「19です(数え歳)」と答えると、口入れ屋は「何歳の19です。39歳ですか?」と尋ねた。

浪花千栄子が「ただの19歳です」と答えると、口入れ屋は「へえ、44~5歳かと思った」と驚いた。

浪花千栄子が「今晩、寝るところも無いんです」と頼むと、口入れ屋は「急に言っても、お屋敷奉公は見つかりません。19歳なら、この人が従業員を探しているので、ひとまず、そこで働いたらどうですか」と勧めてくれた。

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カフェー「オリエンタル」で女給になる

さて、口入れ屋から紹介された仕事は、京都・師団前にあるカフェー「オリエンタル(辻へい)」だった。

「オリエンタル」は兵隊を相手にするカフェーで、2階が1杯飲ましになっていた。カフェーと言っても、色々な形態の店があり、「オリエンタル」は、「売春」もやっていたので、警察が頻繁に出入りするような店だった。

浪花千栄子はカフェーで働くことなど、嫌で嫌で仕方がなかったが、兎にも角にも頼れる人も居らず、寝る場所も無いので、カフェー「オリエンタル」で働くことにした。

さて、浪花千栄子は女中の仕事かと思ったが、厨房にはコック兼飯炊きの朝鮮人が居て人は足りているので、フロアに出て女給の仕事をするように言われた。女給というのは、現在で言うホステスに相当する仕事である。

しかし、浪花千栄子は、お化粧をして人前に出るなど、とんでもないと思い、女給の仕事を拒否して、強引に厨房で洗い物をしていた。

すると、先輩の女給ユリちゃんが、「そんなことをしても、お金にならない。店に出れば、兵隊さんがチップをくれる。それで生活していくのだから、店に出なさい」と言って、世話を焼いてくれ、髪を結って白粉を塗り、女給の身支度を調えてくれた。

そして、ユリちゃんが「貴女は栗島すみ子に似ている」と言い、「スミちゃん」という名前を付けてくれたので、浪花千栄子は「スミちゃん」という源氏名で女給の仕事をするようになった。

始めてコーヒーをテーブルに持って行ったときは、手がブルブルと震え、テーブルに着くと、コーヒーは半分になっていた。

やがて、兵隊さんが「こんな所には似合わない子だ」と言い、毎晩、通ってくれるようになり、親密になっていき、浪花千栄子も、兵隊を相手に身を売ることになった。

そのようななか、ユリちゃんが「私は女優さんになりたいので、貴女も女優になりなさい。貴女もここを逃げ出さないといけない」と言うが、浪花千栄子は「私は女中奉公がしたいの」と拒否した。

しかし、売春の当日、浪花千栄子が、お稲荷様のお参りから帰ってくると、ユリちゃんが浪花千栄子の荷物を持ってカフェー「オリエンタル」を辞めており、荷物が無くなっていた。

すると、浪花千栄子は、ユリちゃんの他に頼れる人が居ないので、「オリエンタル」を辞めてユリちゃんを追いかけたのだった。

浪花千栄子の立志伝-三笠澄子(みかさ・すみこ)の誕生」へ続く。

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