浪花千栄子の立志伝-師匠の村田栄子に弟子入り

NHKの朝ドラ「おちょやん」のモデル浪花千栄子の生涯を描く立志伝の第9話「師匠の村田栄子に弟子入り」です。

浪花千栄子の立志伝の目次は「おちょやん-浪花千栄子の立志伝の目次」をご覧ください。

村田栄子に弟子入り

カフェー「オリエンタル」を辞めた浪花千栄子は、女優志望のユリちゃんに連れられて、京都・嵐山のプロダクションに入り、「三笠澄子」という芸名を貰って看板女優となったが、1本の映画を撮ること無く、3ヶ月ほどでプロダクションは倒産した。

倒産するとき、プロダクションの監督が再就職先を世話してくれたので、浪花千栄子は、女中奉公を希望していたが、監督の紹介で、第二京極の三友劇場を根城にしていた村田栄子一座に入った。

村田栄子

監督が紹介したのは浪花千栄子だけだが、女優志望のユリちゃんは、絶対に浪花千栄子から離れないと言い張り、浪花千栄子にくっついて村田栄子一座に入った。

さて、村田栄子は、小山内薫の弟子で、松井須磨子の「芸術座」や武田正憲の「新日本劇」にも居たことがあり、小柄ながら気の強い女優だった。

浪花千栄子は、女中など要らないと言われたが、行く当てが無いので、なんとか村田栄子一座に入れてもらい、女中仕事をしていた。

しかし、舞台「サメロ」で、指輪を渡す役の弟子がいつも指輪の順番を間違えて渡していたので、浪花千栄子が2~3回で覚えて指輪を渡すと、これが気に入られ、村田栄子の弟子にされてしまった。

さて、村田栄子は、よく台詞を間違えるので、全ての台詞を覚えていた浪花千栄子が、舞台の袖から村田栄子に台詞を教えるようになった。

これはプロンプターという仕事で、普通のプロンプターは台本を見て台詞を教えるのだが、浪花千栄子は難しい字は読めないので、舞台を観て全ての台詞を暗記していた。

そのようななか、子供に人気の舞台「正ちゃんの冒険」に主演していた村田栄子が肺炎で倒れたのだが、代役の女優が間に合わない。

そこで、台詞を覚えている浪花千栄子は、代役に仕立て上げられ、舞台に上げられてしまった。

しかし、初めての大役なので、舞台に上がると、覚えているはずの台詞が出てこない。

そこで、浪花千栄子は、セットの木によじ登るマネをしたり、ロープにぶら下がったり、飛んだり跳ねたりして誤魔化した。

しかし、これが大正解だった。そもそも、「正ちゃんの冒険」というのは子供向けの舞台で、浪花千栄子のように暴れ回って「冒険」しなければならないのだが、村田栄子は怖がって、「冒険」をしていなかったのだ。

このため、浪花千栄子の「冒険」を観た子供達が大喜び。舞台を飛んだり跳ねたりしている様子がウケけにウケて、浪花千栄子は村田栄子一座に欠かせない看板女優となったのである。

ところが、浪花千栄子が居ないと舞台が成立しないのに、癇癪(かんしゃく)持ちの村田栄子は、何が気に入らないのか、浪花千栄子に辛くあたり、浪花千栄子は生傷の絶えない日々が続いた。

しまいに、浪花千栄子は3階の階段から蹴り落とされて1階まで転げ落ちたので、三友劇場の主人が見るに見かねて、浪花千栄子を映画の「東亜キネマ」へ推薦した。

このとき、三友劇場の主人が、「村田栄子を千も超えるように」という意味を込めて、「香住千栄子(かすみ・ちえこ)」と名付けてくれたようだ。

浪花千栄子の立志伝-東亜キネマの香住千栄子」へ続く。

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