父・林豊次郎が惚れた吉本せいの商才

朝ドラ「わろてんか」のモデル・吉本せい(林せい)の生涯を実話で描く「吉本せいの生涯」の第2話「父・林豊次郎が惚れた吉本せいの商才」です。

吉本せい(林せい)が米屋で才能を発揮

吉本せい(林せい)は、奉公が開けて実家・林家に戻ると、家業の米穀店を手伝い、父・林豊次郎から米の販売を任されるようになっていた。

ある日、父・林豊次郎は、吉本せい(林せい)に米の販売を任せて以降、何故か売上げが増えていることを不思議に思い、吉本せい(林せい)の仕事を物陰から観察していた。

すると、父・林豊次郎は、吉本せい(林せい)の親指が異常に太いことに気付いた。なんで、あんなに親指が太いんや?

実は、吉本せい(林せい)は親指に包帯を巻き、それから軍手をはめていたので、親指だけが異常に太かったのである。

父・林豊次郎は、どうして親指が太いのか、不思議そうに見ていると、その理由は直ぐに分かった。

吉本せい(林せい)は客の注文を受けると、升(ます)ですくい取った米をすり切り棒ですり切って米を量るのだが、吉本せい(林せい)は米をすり切るときに、太くなった親指を升の中に突っ込むのである。

すると、親指の分だけ、米の量は減る。これが神業で、客には気づかれない。父・林豊次郎でも、注意してみなければ分からないという程の早業であった。

そして、吉本せい(林せい)は、これを何回か繰り返し、注文された量をはかり終えると、最後に「今は、おとうはん(父・林豊次郎)が居てませんさかい、これ、おまけでっせ」と言い、2握りほど米を足してやる。

吉本せい(林せい)は米を計量するときに親指を突っ込んで米を減らしているので、最後に2握りほど米を足してプラス・マイナス・ゼロになるのだが、客の方はオマケをしてもらったと思い、得をした気分になって喜んで帰る。

これが林の米屋が繁盛しはじめた秘密で、わざわざ吉本せい(林せい)の居る時を狙って買いに来る客も居るという程だった。

このため、父・林豊次郎は、吉本せい(林せい)の商才に惚れ込み、跡取り息子の長男が健在なのに、吉本せい(林せい)に婿養子を取って林の米穀店を継がせることを決めた。

「兄ちゃんが居てるのに、なんで?」と尋ねると、父・林豊次郎は「林の米屋が世の中にいくつあってもかまへんやろ」と答えている。

そのようななか、吉本せい(林せい)に、4代続く老舗の荒物屋「箸吉」から縁談が舞い込んできたのである。

なお、第3話は「吉本せい(林せい)の立志伝の目次」からご覧ください。

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