浪花千栄子の立志伝-奉公に出る経緯

NHKの朝ドラ「おちょやん」のモデルとなる浪花千栄子の生涯を描く立志伝の第3話「奉公に出る経緯」です。

浪花千栄子の立志伝の目次は「おちょやん-浪花千栄子の立志伝の目次」をご覧ください。

継母の家出

継母(父親の後妻)は飲み屋で中居をしていたらしい。継母は、妻や母親らしいことは何一つせず、嫁入り道具の三味線を取り出して、昼間から歌っているような人だった。

そんな継母には田舎での生活が合わなかったのか、家出をしたため、南口卯太郎が急いで連れ戻したのだが、継母が戻る条件が引っ越しだったようで、一家は大阪府大阪市阿倍野区の南田辺へと引っ越した。

しかし、1ヶ月ほどすると、継母が再び家を出たので、父・南口卯太郎は半狂乱になって継母を捜し回り、家に戻ってこなかった。

父・南口卯太郎は、いつも女のケツを追いかけ回してばかりで、家に戻ってこず、いつも残された子供が被害を被っていた。

さて、米びつに1斗5升の米が残っていたので、浪花千栄子と弟は、1日1杯のお粥にして食べていたのだが、米を食べ尽くしても父・南口卯太郎は戻ってこなかった。

最初は近所の人の同情で食べものを恵んで貰っていたのだが、いつまでも同情が続くわけではないので、池の縁になっていたヒシの実を取って食べて飢えをしのいだ。

やがて、池の縁のヒシの実を食べ尽くすと、池の中になっているヒシの実を食べようとして、池の中に入るのだが、ズボズボと体が沈んでしまう。

池の近くに踏切があり、踏み切り番のおじさんは、土左衛門(水死体)が出たら自分の責任になってしまうので、浪花千栄子らが踏切を渡ろうとすると、追い払うようになった。

しかし、浪花千栄子は、踏切を渡らないと、池に行けないので、おじさんが汽車に旗を振っている隙を付いて踏切を渡った。おじさんは慌てたが、時既に遅しである。

すると、おじさんも知恵を絞り、長い竿竹を持ってきて、浪花千栄子らが踏切を渡る前に、竿竹で浪花千栄子を叩いて、踏切を渡るのを阻止するようになった。

このため、浪花千栄子らは踏切が渡れなくなり、池のヒシの実を食べられなくなってしまった。

しかし、堆肥を積んである隣に、山積みになったサツマイモを見つけた。サツマイモにはハエがたかっており、腐って糸を引いていたが、浪花千栄子らは腐ったサツマイモの山を食べ尽くした。

ある日、弟を連れて駄菓子屋の前を通りかかると、弟が「姉ちゃん、これ」と言い、大きなカリントウを差し出した。

浪花千栄子が「どうしたの?」と尋ねると、弟は「もらった」と答えたが、どう考えても売り物のカリントウをタダでくれるはずがない。

浪花千栄子は「くれるはずないでしょ」と言い、弟を叩くと、弟の手を持って駄菓子屋が見えなくなるまで走った。

そして、カリントウを2つに割ると、弟は「大きい方をお姉ちゃんにあげる」と言ったが、浪花千栄子は小さい方を食べ、大きい方を弟にあげた。

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奉公に出る経緯

いよいよ、口に入れる物が無くなると、浪花千栄子は富田林の祖母が恋しくなった。道など分からなかったが、汽車で来たのだから、線路沿いに歩いて行けば、たどり着くだろうと思い、弟を連れて線路沿いに歩いて、祖母の家を目指した。

やがて、日が暮れてきて、頼りの線路も無くなったので、途方に暮れていると、茅葺きの小屋があったので、小屋に潜り込んで寝た。

翌朝、目を覚ますと、甘酸っぱいニオイがしてきたので、辺りを探すと、カマスに沢山のパンの切れ端が入っていた。

こんなご馳走は見た事が無い。思わず、パンの切れ端を手に取り、お腹がはち切れるまで食べていると、大きなおじさんが目の前に立っていた。

浪花千栄子が理由を話すと、おじさんは父・南口卯太郎の知り合いだった。おじさんは養豚場を営んでおり、さっき食べたパンの切れ端は豚の餌だったのだ。

そして、おじさんが「子供の足では無理だから帰りなさい。お父さんに帰るように言ってあげるから」と言い、2斗の米と10銭ずつ恵んでくれたので、浪花千栄子は弟を連れて自宅へと引き返した。

すると、おじさんが連絡をしてくれたのか、まもなく、父・南口卯太郎が継母を連れて戻っていた。

しかし、継母は前夫との間に儲けた5歳の男の子を連れて帰ってきており、継母が「あの子(浪花千栄子)は嫌や」と言うので、浪花千栄子は祖母の家に預けられた。

その後、弟も祖母の家に預けられたのだが、祖母と同居している叔母が2人も子供を押しつけられて困ったので、口減らしのため、父・南口卯太郎に内緒で、浪花千栄子を道頓堀の仕出し料理屋「浪花料理」へ奉公に出したのである。

働く言うても、8歳の子供なので何の役にも立ちません。お給料は1銭も要りません。食事の面倒だけみてください。着る物も無いので、何なりと着せてください。よろしゅう、お頼みもうします。

浪花千栄子の立志伝-浪花料理で「おちょやん」になる」へ続く。

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