NHKの朝ドラ「おちょやん」で「アドリブ王」として活躍する須賀廼家千之助(すがのや・せんのすけ)のモデルを解説します。
「おちょやん」の須賀廼家千之助(星田英利)は「アドリブ王」と呼ばれているので、須賀廼家千之助のモデルは、「アドリブ王」と呼ばれた喜劇俳優の曾我廼家十吾(そがのや・じゅうご)である。
モデルの曾我廼家十吾は、2代目・渋谷天外とともに「松竹家庭劇」を旗揚げし、「茂林寺文福」というペンネームで脚本も書いていた。
当然、曾我廼家十吾は脚本を書いているのだから、台詞は全て頭の中に入っているはずなのに、いざ、舞台になると、台詞とは違うことを言うのである。
台本には「A」を書いてあっても、舞台では「B」と言う。
それなら、「B」で行くのかと思っていたら、翌日は「C」と言うのだ。
曾我廼家十吾はアドリブで次々に台詞を変えてしまうので、出演者もその度にアドリブで対応しなければならない。
曾我廼家十吾がアドリブが多い理由は、即興劇の「俄(にわか)」出身だったからである。「松竹家庭劇」は曾我廼家十吾の影響で、非常にアドリブの多い喜劇団だった。
さて、朝ドラ「おちょやん」のモデルとなる女優・浪花千栄子もアドリブの多い女優として有名だ。
浪花千栄子がアドリブが得意な理由は、「松竹家庭劇」で曾我廼家十吾に鍛えられたからである。
浪花千栄子は、松竹家庭劇時代について、「十吾さんと御いっしょの舞台は、人が一月かかる勉強を一日でマスターするほどの、重量感と緊迫感の連続」と回想している。
そして、曾我廼家十吾に鍛えられたアドリブが、浪花千栄子の運命を変える救世主となる。
浪花千栄子は、2代目・渋谷天外と離婚した後、芸能界から引退して、自殺未遂を起こし、電車賃も無いほど、京都の長屋の2階で落ちぶれていた。
そのようななか、NHKのラジオドラマ「アチャコ青春手帳」に主演する花菱アチャコが、母親役に、大阪弁が話せて自分のアドリブに対応できる女優として、浪花千栄子を指名したのである。
こうして、落ちぶれていた浪花千栄子は、花菱アチャコの指名を受けて芸能界へ返り咲き、花菱アチャコとのラジオドラマ「アチャコ青春手帳」「お父さんはお人好し」を大ヒットさせる。
また、浪花千栄子はラジオドラマ出演が切っ掛けで、昭和27年の映画「最後の顔役」で24年ぶりに映画出演を果たし、以降は続々と映画や舞台でも活躍し、大阪を代表する女優へと躍進するのだった。
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